先日、2022年度の国家予算が閣議決定されたというニュースを見ました。予算総額は、107.6兆円と前年度から+1.0兆円の増加になったそうです。ちなみに税収は65.2兆円と最高額が見込まれているそうで、国債の新規発行額も昨年43.6兆円の所、36.9兆円まで減少している様です。
税収が増え、国債の新規発行額が減ったのは良い事なのでしょうが、いずれにせよ国の借金が膨らんでいるのは間違いないと思います。コロナ禍で収益が落ちた企業や生活困窮者への支援は必要ですが、国の借金が増えすぎると将来「ハイパーインフレ」になるかもしれない、という不安がよぎります。
給料が増えない日本人
2013年から日銀の総裁になった黒田さんがこれだけ金融緩和をしているのに、日本の給与所得者の収入は上がりません。以前見た調査結果では、1990年台の後半にピークを付けていた給与所得者の収入は右肩下がりになっています。
海外では金融緩和の影響もあり、どの国でも給料が上昇しています。インフレにより物価だけでなく人件費も高騰しているのも影響しているのですが、直近では少し増加傾向にあるとはいえ、世界で日本だけ取り残されている様に感じます。
今では、「日本は物価が安い国」という認識が海外では広がっている様であり、コロナ前は観光や買い物目的で世界各国から日本に来ていた事を思い出されます。
一方で最近では物価も上がりつつあり、このままですと給料は上がらないのに物価が上がる事により、ただ生活が苦しくなるだけ…という状況になりそうです。日銀は金融緩和を継続して、何とかインフレに持っていきたいようですが、最近は日本政府の意図は別の所にあるのではないか、と考えてしまいます。
物価や人件費が安い、という事は、製造業は海外より日本で生産した方が有利という事になります。製造業は、自動化されたとはいえ、沢山の雇用を生む事が出来ます。日本政府は、日本人の給料を上げない様にすると共に、製造業の国内回帰を期待しているのではないか、という気がします。
もしかすると、10年、20年後には中国をはじめとする東南アジアよりも、日本で工場を作った方が製造原価が低いといった現象が起こるかもしれません。その時は、日本人が大切にしている「勤勉さ」が有利に働くのでは…とポジティブな方に考えてしまします。
投資をしないと負ける?
先日政府機関が作成した「日本企業の財務体制推移」という報告書を読みました。1989年~2017年までの日本企業の財務体制を調査した報告書であり、これによるとバブル崩壊後の2000年頃から日本企業の財務体質が急激に良くなっている事が分かります。
下が負債/純資産の推移ですが、負債は殆ど変わらないのに純資産は増加しています。企業の財務体質を示す「自己資本比率」もバブル崩壊後は20%程度で推移していたのが、2017年には40%以上になっています。
自己資本比率の目安として、40%以上あれば通常の会社(直ぐに倒産する危険性は無い)という事なので、日本企業の財務体質は20年前と比べてかなり良くなったと思います。更に「売上/利益の推移」、「配当金の推移」、「内部留保額の推移」を見ると企業の更に詳しい状況を知ることが出来ます。
売上高はそれ程変化が無いのですが、経常利益が急激に拡大しており、企業の収益性の向上が良く見て取れます。更に内部留保額を見ると、収益性の改善で純資産(恐らく利益剰余金)が増えているのが分かります。
この結果から考えられる事は、企業はバブル崩壊後しばらくは財務体質改善や収益性向上に苦労をしてきたが、今では得た利益を「内部留保」として貯め込んでおり、従業員(給与所得者)への還元は限定的、と考えられます。
一方で利益に応じて配当金も増やしている事から、これからは給料アップは望みが薄く、儲かっている企業に投資をして企業が得た利益を「配当金」という形で還元してもらった方が良いと思えます。
従業員の給料は、一度上げると中々下げにくいので、従業員の給料は上げず、利益の還元は調整しやすい配当金で行う、という状況になっていると思います。そう考えると、収入を増やしたいのであれば、これから先は投資は必須の様な気がします。